🗓 Security Digest: 2026/02/18
💬 Daily Almana -- 今日は、攻撃者がいかに「信頼されているツール」の影に隠れているかが浮き彫りになる一日ですね。AIアシスタントが悪用されたり、正規のリモート管理ツールが侵入の足がかりにされたりと、もはや攻撃は派手なマルウェアだけではありません。私たちが日常的に使う、信頼していたはずの仕組みそのものが、静かに武器へと姿を変えています。さらに、ハードウェアやファームウェアといった根深い部分での脆弱性も報告されており、テクノロジーのサプライチェーン全体で信頼の基盤が問われる日となりそうです。
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Dellのゼロデイ脆弱性、中国系ハッカーが2024年半ばから悪用

中国系ハッカーがDell製デバイスに存在する深刻な脆弱性を2024年半ばからゼロデイ攻撃で悪用しており、管理者権限の奪取につながる可能性があります。迅速な対応が求められます。

ゼロデイ攻撃は発覚が遅れがちで、長期間にわたる潜伏活動を許してしまいます。特にファームウェアレベルの脆弱性は、OS再インストールでも除去が難しく深刻な脅威となります。サプライチェーンの各段階でのセキュリティ検証の重要性が改めて問われます。


Dell製デバイスの深刻な脆弱性が、中国系ハッカーによって2024年半ばからゼロデイ攻撃として悪用されていることが報じられました。この脆弱性を悪用されると、攻撃者はシステム上で高い権限を取得できる恐れがあります。


この脆弱性の影響を受ける具体的なDell製品のリストは現在確認中ですが、ファームウェアレベルの問題であるため、サーバー、PC、ノートPCなど広範なデバイスが対象となる可能性があります。Dell製品を利用しているすべての企業・個人が注意すべき状況です。


Dellはすでに対応ファームウェアをリリースしている可能性が高いです。自社で利用しているDell製品のモデルを確認し、公式サポートサイトから最新のファームウェア・アップデートを可及的速やかに適用してください。脆弱性スキャンツールなどを活用し、自社環境内での影響を評価することも重要です。


攻撃が長期間にわたって行われていたことから、すでに侵害されている可能性も視野に入れる必要があります。今後、この脆弱性を悪用した具体的な攻撃手法や、侵害された場合の痕跡(IoC)に関する情報が公開されるかどうかに注目が集まります。

参考: Chinese hackers exploiting Dell zero-day flaw since mid-2024

🔐 Security

CopilotとGrokがマルウェアのC2プロキシとして悪用される可能性が示される

Microsoft CopilotやxAIのGrokなど、Webブラウジング機能を持つAIアシスタントが、マルウェアのコマンド&コントロール(C2)サーバーへの通信を中継するプロキシとして悪用される危険性が指摘されました。正規の通信に紛れるため、検知が困難になる恐れがあります。

AIサービスをインフラとして悪用する新しい攻撃手法です。正規のドメインへの通信として偽装されるため、従来のドメインベースのフィルタリングでは検知が困難になります。AIサービスの利用に関するセキュリティポリシーの見直しが求められます。


Webアクセス機能を持つAIチャットボットが、マルウェアのC2サーバーとの通信を中継する「プロキシ」として悪用できることが研究者によって実証されました。攻撃者はAIサービスを介して不正なコマンドを送信し、情報を窃取できます。


Microsoft CopilotやxAI Grokをはじめ、同様の機能を持つAIサービスを業務で利用しているすべての組織が対象です。これらのAIサービスへのアクセスを許可している企業ネットワークは、潜在的なリスクを抱えていることになります。


この手法の最大の問題点は、マルウェアからの通信がAIサービスの正規ドメイン宛てに見えるため、従来のネットワークセキュリティ製品での検知が極めて困難になる点です。攻撃者は正規のトラフィックに紛れて、自らの活動を隠蔽できます。


AIサービス提供側が、このような悪用を検知し、防止する対策を講じるかどうかが焦点となります。防御側はトラフィックの内容をより詳細に分析する技術や、AI利用に関する厳格なログ監視体制の構築が必要になるでしょう。

参考: Researchers Show Copilot and Grok Can Be Abused as Malware C2 Proxies

🔐 Security

Androidタブレットにファームウェアバックドア「Keenadu」が混入、正規OTAアップデートで感染

Androidデバイスのファームウェアに埋め込まれた新たなバックドア「Keenadu」が発見されました。このバックドアは、正規の署名付きOTA(Over-The-Air)アップデートを通じて配布され、データの窃取や遠隔操作を可能にします。

サプライチェーン攻撃の典型例であり、製造段階でファームウェアにマルウェアが混入するケースです。正規の署名がされているため、ユーザーや一般的なセキュリティソフトでは検知がほぼ不可能です。安価なデバイスを選ぶ際には、メーカーの信頼性も考慮に入れるべき重要な要素となります。


複数のブランドのAndroidタブレットで、ファームウェア自体に「Keenadu」と呼ばれるバックドアが仕込まれていることが発見されました。このバックドアは正規のOTAアップデートプロセスを通じて配布されるため、ユーザーが気付くのは困難です。


Alldocubeなど、特定のブランドの安価なAndroidタブレットで確認されていますが、同様のサプライチェーンを持つ他のメーカーにも影響が及んでいる可能性があります。これらのデバイスを利用している個人および組織が直接的な影響を受けます。


攻撃が製造段階、つまりサプライチェーンの上流で行われている点です。正規のアップデートとして配布されるため、ユーザー側での対策は非常に困難です。ファームウェアレベルでの侵害は、デバイスの初期化でも除去できない永続的な脅威となります。


影響を受けるデバイスの全リストが公開されるか、またメーカー側から修正アップデートが提供されるかが焦点です。このようなサプライチェーン攻撃は氷山の一角である可能性もあり、信頼できるベンダーからデバイスを調達することの重要性が改めて浮き彫りになりました。

参考: Keenadu Firmware Backdoor Infects Android Tablets via Signed OTA Updates

🧑‍💻 Developer

Notepad++、アップデートのセキュリティを「二重ロック」機構で強化

人気のテキストエディタNotepad++は、最近悪用されたサプライチェーン攻撃の脆弱性に対応するため、アップデート機構に「二重ロック」設計を導入しました。これにより、アップデートパッケージの署名検証がより厳格になり、不正な更新を防ぎます。

ソフトウェアのアップデートプロセスは、サプライチェーン攻撃の格好の標的となります。Notepad++のような広く使われるツールがセキュリティを強化することは、多くの開発者を保護する上で非常に重要です。署名の検証を多重化するアプローチは、他のソフトウェアでも参考にすべき優れた対策と言えるでしょう。


テキストエディタのNotepad++が、ソフトウェアのアップデートプロセスにおけるセキュリティを強化するため、新たな「二重ロック」メカニズムを導入しました。これは、過去に発生したアップデートプロセスを狙ったサプライチェーン攻撃への対策です。


Notepad++を利用しているすべての開発者や一般ユーザーに関係があります。安全なアップデートが可能になることで、マルウェア感染などのリスクが低減されます。


この「二重ロック」は、アップデートパッケージの署名を複数の方法で検証する仕組みです。万が一、一つの署名システムが侵害されても、もう一方で不正を検知できるようにすることで、サプライチェーン攻撃に対する耐性を高めています。


広く普及しているツールほど、そのアップデート機構は攻撃者にとって魅力的な標的となります。Notepad++のこの取り組みは、開発者コミュニティ全体に対する責任感の表れであり、他のOSSプロジェクトも見習うべき良い事例だと評価できます。

参考: Notepad++ boosts update security with ‘double-lock’ mechanism

🔐 Security

RMMツールの悪用が急増、攻撃者はマルウェアを使用しない方向へ

攻撃者がマルウェアを使わず、正規のリモート監視・管理(RMM)ソフトウェアを悪用する手口が急増しています。RMMツールは正規のツールであるため検知を回避しやすく、システムへの持続的なアクセスや効率的な操作を可能にします。

「環境寄生型(Living off the Land)」攻撃の一種で、防御側にとっては非常に厄介な脅威です。正規ツールが悪用されるため、不審なファイルの検知といった従来型の対策では不十分です。ツールの使用状況を監視し、通常とは異なる挙動を検知する振る舞い検知の仕組みが不可欠になります。


攻撃者が自前のマルウェアを使用せず、IT管理者が使う正規のリモート監視・管理(RMM)ツールを乗っ取って悪用する攻撃が爆発的に増加していると報告されました。


RMMツールを導入している企業、特にIT管理部門やMSP(マネージドサービスプロバイダ)が主な標的です。正規ツールが悪用されるため、あらゆる業種の組織が影響を受ける可能性があります。


攻撃者はマルウェアを作成・配布する必要がなく、防御側の検知網を容易にすり抜けることができます。正規のRMMツールはシステムへの深いアクセス権を持つため、一度悪用されると情報窃取やランサムウェアの展開など、深刻な被害に直結します。


RMMツールのアクセス管理を徹底し、多要素認証(MFA)を必須にしてください。また、誰が、いつ、どのような操作を行ったかのログを詳細に監視し、通常業務とは異なる不審なアクティビティがないか定期的に確認する体制を構築することが重要です。

参考: RMM Abuse Explodes as Hackers Ditch Malware

🔐 Security

新たな攻撃手法「ClickFix」、DNSルックアップコマンドを悪用しマルウェアを配布

「ClickFix」と呼ばれる新たな攻撃キャンペーンが、DNSルックアップコマンド(nslookupなど)を悪用してModeloRATというマルウェアを配布する手口を使っていることが明らかになりました。ユーザーを騙して自身のマシン上でコマンドを実行させ、感染させます。

OSに標準搭載されている正規のコマンドを悪用する「環境寄生型」攻撃の一種です。DNSのTXTレコードに不正なコードを埋め込むなど、防御側が想定しづらい経路を利用します。従業員へのセキュリティ教育と、不審なコマンド実行を監視するEDRなどのエンドポイント対策が重要になります。


「ClickFix」と名付けられた攻撃で、Windowsの標準コマンドである「nslookup」を悪用し、ModeloRATというリモートアクセス型トロイの木馬を感染させる手口が確認されました。


主にWindows PCを利用する個人および企業の従業員が標的です。特に、技術的な指示と称して不審なコマンドの実行を促すソーシャルエンジニアリングに注意が必要です。


この攻撃の巧妙な点は、マルウェア本体を直接送るのではなく、DNSクエリの応答にマルウェアの断片を隠し、nslookupコマンドを使ってそれを組み立てさせる点です。ネットワーク境界での検知が難しく、攻撃が成功しやすくなっています。


OS標準の正規コマンドを悪用する手口は今後も多様化すると予想されます。PowerShellだけでなく、certutilやnslookupなど、様々なコマンドが攻撃に利用される可能性を念頭に置き、エンドポイントでのコマンドライン実行ログを監視・分析する体制の強化が求められます。

参考: ClickFix Attacks Abuses DNS Lookup Command to Deliver ModeloRAT

🎬 Entertainment

HackMyClaw: オンラインのクレーンゲームをハックするCTF

オンラインで操作できる実際のクレーンゲーム機を対象としたハッキングチャレンジ「HackMyClaw」が公開されました。Webサイトの脆弱性を突いて、景品を獲得することを目指すCapture The Flag(CTF)形式のコンテンツです。

ゲーム感覚で実践的なWebセキュリティのスキルを学べる面白い試みです。IoTデバイスとWebアプリケーションが連携するシステムの脆弱性を探す良いトレーニングになります。セキュリティ学習の教材として、またエンジニアの知的好奇心を刺激するコンテンツとして価値があります。


Webブラウザから遠隔操作できる本物のクレーンゲーム機をハッキングして景品を獲得するという、ユニークなCTF(Capture The Flag)サイト「HackMyClaw」が公開されました。


Webセキュリティを学習している学生やエンジニア、CTFに興味がある人、あるいは単にユニークなハッキングチャレンジを楽しみたい人などが対象です。


このプロジェクトの面白さは、仮想的な環境ではなく、物理的なクレーンゲーム機という実機がハッキングの対象である点です。Webアプリケーションの脆弱性を見つけるスキルが、現実世界のデバイスの操作に直結する体験ができます。


セキュリティ技術を楽しく学ぶための素晴らしい教材です。複雑なシステムへの攻撃を学ぶ前の入門として、また専門家が息抜きに楽しむコンテンツとしても優れています。このような実践的で魅力的な学習機会が増えることは、業界全体にとって良いことだと思います。

参考: HackMyClaw

✒️ 編集後記
サイバーセキュリティの古典的な二元論、すなわち「正規」と「不正」を分かつ境界線は、もはや意味をなさない。今日の脅威の本質は、信頼そのものの悪用にある。攻撃者は城壁を破壊するのではなく、信頼という名の合鍵を手に、堂々と門を通過するのである。AIアシスタント、システム管理ツール、そしてハードウェア。これら信頼の礎とされてきたものこそが、最も危険な攻撃媒介となりうるのだ。我々が対峙すべきは、外部からの侵入者ではない。内部に潜む、信頼という名の脆弱性にほかならない。故に、防御のパラダイムは境界線の死守から、あらゆるものを絶えず疑う「ゼロトラスト」へと完全に移行せねばならぬ。